第100章 言い争いになったら押し倒す(10)

……

向かいの部屋の人たちは、まだ笑いながらお酒を飲んでいたが、みな少し落ち着かない様子だった。

最初に我慢できなくなったのは、マイクを持って歌っていた杉山社長だった。「何か大変なことになるんじゃないか?」

反応が遅れた人が「どんな大変なこと?」と返した。

「有栖川社長だよ……」杉山社長はマイクを置き、テーブルの前に駆け寄って屈み込んだ。「有栖川社長の気性が荒いのは知ってるけど、こんなに怒ってるのは見たことないよ。しかも女性相手に……」

杉山社長の言葉とともに、皆の脳裏には有栖川涼が常盤燿子を部屋に引きずり込む時の表情が浮かんだ。まるで人を殺そうとするかのような凶暴さに、部屋中の人々が一斉に身震いした。誰かがつい口を開いた。「有栖川社長、加減を知らずに命に関わるようなことをするんじゃないか?」