第113章 忘却は最大の無情(3)

傷は深くなく、軽く引っ掻いただけで、大したことはなかった。

細い血の粒が外に滲み出ていて、絆創膏を貼れば止血できるだろう。

有栖川涼の思考がまだ定まらないうちに、陸田透真は地面にしゃがんでいる常盤燿子に手を差し伸べた。「沙羅ちゃん、早く立って、私が片付けるから…」

彼女は陸田透真とかなり親しいようだ…昨日、彼女が郊外で帰れなくなったと聞いた時、陸田透真は彼に彼女を迎えに行くよう急かしていた。昨晩、彼女が彼のスイートルームから出る時にほとんど転びそうになったが、陸田透真が彼女を支え、彼女のために彼を責めた。今日の食事では、彼女は陸田透真に何度も笑いかけ、何が食べたいか教えてくれれば用意すると言っていた…

有栖川涼は目を細め、考えがまとまらないうちに、彼の手が突然伸び、陸田透真より先に常盤燿子を力強く地面から引き上げた。そして彼女を自分の後ろに引っ張り、自分の体で陸田透真と彼女を隔てた。