常盤燿子は苦労して有栖川涼を車の中に押し込んだ。後部座席だったが、泥酔した彼が何かにぶつかるのを恐れて、安全ベルトを締めてあげた。
帰り道の間中、有栖川涼は目を閉じたまま、唇は絶えず動いていた。
運転に集中していた常盤燿子は、彼が何を言っているのか注意して聞いていなかった。車が別荘に近づいたとき、常盤燿子はBluetoothイヤホンをつけて家に電話をかけ、執事に迎えに来るよう頼んだ。
車が敷地内に入ると、執事はすでに待っていた。車が停まるとすぐに執事が近づいてきた。常盤燿子が後部ドアを開けると、執事は中に座っている有栖川涼を見て驚いた。「有栖川さん、どうされたのですか?」
「酔っ払ってるの」常盤燿子はさらりと答え、手を伸ばして有栖川涼を車から引っ張り出した。
男性はやや重く、彼女は引っ張るのに苦労した。執事は急いで前に出て手伝い、二人は左右から有栖川涼を支えて階段を上り、ベッドに寝かせた。