第175章 彼女に手を出してみろ（5）

有栖川涼は電話の話し中の音を聞きながら、腹立たしげに手にしていた携帯電話を投げつけた。それは少し離れた床に落ち、「バン」という大きな音を立てた。

彼を脅す？幼い頃から大人になるまで、彼は人に脅されるという経験をしたことがなかった。

振華グループだと？下劣な手段で成り上がった三流企業が、彼を脅すとは何事か？

有栖川涼は怒りで胸が激しく上下し、しばらくしてから隣の固定電話を取り、大和くんに電話をかけた。「契約書を用意しろ、城東の土地の転売契約書だ！」

「誰に売るかなんてお前に関係ないだろう？余計なことを聞くな、用意しろと言ったら用意しろ。30分...いや20分...いや10分以内に家の前に持ってこい！」

そう言うと、有栖川涼は受話器を電話機に乱暴に叩きつけた。

まったく腹が立つ。生まれて初めて脅しに屈したのが、一人の女のせいだとは？