第168章 そのまま読み上げる(8)

彼は口に何かを含んでいて、曖昧な「食べる」という音を発した。

常盤燿子は茶碗の中の魚の身を見つめ、唇を引き締めて静かに座っていたが、ついにスプーンを手に取った。

彼女のこの動きを見て、傍らに立っていた執事は、密かにほっとした。

常盤燿子は魚の身をかき分け、下のお粥をスプーン一杯すくい、少し口に含んだだけで、置いた。「もう満腹です」

彼女がスプーンを動かすのを見て、なぜか気分が良くなっていた有栖川涼は、彼女のこの言葉を聞いた瞬間、眉間にしわを寄せ、彼女の茶碗を見た。

彼が取り分けた魚の身には手をつけず、お粥も少し動かしただけで、ほとんど食べていないのと変わらなかった。

彼は彼女に何も食べないよりは箸を動かしてほしいと言ったのに、彼女は本当に彼をごまかすために二、三回箸を動かしただけなのか?