第229章 他人の妻(9)

有栖川涼は「ああ」と声を出し、ソファに座り、リモコンを手に取ってテレビをつけ、適当な番組を見始めた。

執事はキッチンへ行き、彼のために熱いお茶を入れ、テーブルに運んできた。

時間は少しずつ流れ、窓の外の陽光は西に傾き、赤く染まり、沈んでいった。太陽が完全に沈んでも、常盤燿子はまだ帰ってこなかった。

有栖川涼は次第に落ち着かなくなり、リモコンを手に持ちながら、絶えずチャンネルを変えていた。

7時になり、執事は夕食の準備を整え、近づいて尋ねた。「有栖川さん、今夕食をお召し上がりになりますか?」

有栖川涼は執事の言葉に応じず、振り返って既に暗くなった窓の外を見つめ、眉間にしわを寄せると、手にしていたリモコンを「パン」とテーブルに投げ、タバコを一本取り出し、窓際に立って吸い始めた。