第261章 美しくはないが、唯一のもの(1)

陸田透真?

彼はどうして急に来たの?有栖川涼を探しに来たのかしら?

常盤燿子はドアを開けながら言った。「有栖川涼は家に……」

残りの「いない」という言葉が口から出る前に、陸田透真はドアを押し開け、急いで入ってきた。「沙羅ちゃん、涼さんは帰ってきた?」

常盤燿子は首を振って言った。「いいえ、彼は最近ずっと家に帰っていないわ」

常盤燿子は陸田透真が少し焦っているのを見て取り、しばらくして我慢できずに尋ねた。「何か起きたの?」

陸田透真は言った。「涼さんは昨夜どうしたのか分からないけど、今日熱を出して、病院で点滴を打つように言ったのに、彼は拒否して、どうしても夜のビジネス会に参加すると言い張って。たぶん機嫌が悪かったんだろうね、お酒をたくさん飲んで。大和くんに迎えに行かせようとしたんだけど、ホテルの玄関を出るなり、彼は鍵を持って自分で車に乗り込んでしまって、僕が反応する間もなく、彼の車は見えなくなってしまったんだ……」