第256章 愛とは、例外を重ねること（6）

「えっ？」電話の向こうの和泉沙羅はこの質問について考えたことがないようで、常盤燿子に尋ねられて少し戸惑った後、口を開いた。「ああ、ちょっと待って……」

電話越しに、常盤燿子は和泉沙羅が誰かと英語で小声で話している声を聞いた。音量が小さかったため、はっきりとは聞き取れなかったが、いくつかの英単語から、和泉沙羅は医師に状況を尋ねているのだろうと推測できた。

約5分ほど経って、電話から和泉沙羅のはっきりとした日本語が聞こえてきた。「今、主治医に聞いてみたんだけど、順調にいけば来月10日には帰国できるって」

来月10日……今日は今月の25日、つまりあと15日で和泉沙羅が戻ってくる。そして彼女は……去らなければならない……常盤燿子は電話を持つ指先がわずかに硬直した。

彼女は和泉沙羅がもう少し後に戻ってくると思っていたが、予想よりもずっと早いことに驚いた。