第281章 あの手この手で探る(1)

いつからか、彼は恐れるようになった。自分の制御できない悪い気性が、彼女を自分から遠ざけてしまうことを。

だから遊園地であの夜、最終的に彼は自制心を失ったが、誰も知らない、あの夜の彼がどれほど必死に自分を抑えていたかを。

そして先ほども、彼は本当に制御を失いかけたが、彼女の驚いた無邪気な表情を見た瞬間、その悪い気性はすべて消え去った。

以前は、彼には理解できなかった。この制御できない変化は、一体なぜなのか?

今になってようやく彼は理解した。それは気にかけること、好きになることだと。

失うことを恐れるから、譲歩するようになり、大切にするようになる。

「終わりました」常盤燿子はアルコールを染み込ませた綿棒で、有栖川涼の手のひらにある最後の小さな傷を消毒してから、静かに言った。