第343章 有栖川涼、私は常盤燿子(3)

ウェイターは慌てて紙幣鑑別機に伸ばした手を引っ込め、少し恥ずかしそうに体に手を擦りつけながら答えた。「はい、お客様」

有栖川涼は何も言わず、約1分ほど経ってから軽く頷き、ドアを開けてコンビニを出た。

車に戻ると、涼はすぐに乗り込まず、車のボンネットに半分寄りかかり、ポケットからタバコを取り出して火をつけた。ちょうど口元に持っていこうとした時、トラブルメーカーが今夜彼に言った言葉が耳に蘇った。「タバコは体に悪いわ。これからは少なくして、気分が悪い時でも自制して、できれば禁煙してほしい」

涼のタバコを持つ動作が突然止まった。タバコの先が下唇に触れたまま数秒間静止し、最後には手を下げた。

彼が帰宅途中に突然車を停めて、彼女をこのゲームに誘ったのは、ロマンチックな時間を過ごして彼女を楽しませたいという気持ちもあったが、それ以上に彼女が隠している悩みが何なのかを知りたかったからだ。