第367章 あなたが否定するなら、私は信じる（7）

彼女が階段の入り口まで走ったとき、有栖川涼に手首を掴まれた。彼女は驚いて悲鳴を上げ、考えることなく振り向いて彼の腕に噛みついた。

彼女は力いっぱい噛みついたが、彼は痛みを感じていないかのように、彼女を近くの壁に投げつけた。背中に鋭い痛みが走ると同時に、彼女の噛む力が緩み、次の瞬間、怒りに満ちた有栖川涼の体が彼女に重くのしかかり、まるで彼女を壁に押しつぶそうとするかのように力を込めた。

常盤燿子は有栖川涼の胸と壁に挟まれて息ができなくなった。苦しさのあまり必死にもがいたが、少しも力が入らず、最後には口を開け、かすれた声で何とか抵抗の言葉を発した。「離して、少し離れて、お願い……」

有栖川涼の頭の中には彼女がビデオで言った「だって私は彼のことが好きじゃないから」「有栖川涼には家にあまり帰ってきてほしくない」「私は彼の子供なんて絶対に産まない」という言葉が渦巻いていた。