第360章 ただ始まりを願い、終わりはない（10）

常盤燿子は有栖川涼の機嫌が悪いときには話したくないことを知っていた。彼の今の気分が極度に悪いことも見て取れたので、彼の返事を待たずに、彼に向かって唇を曲げて微笑み、階段を素早く駆け上がった。

お風呂のお湯を準備した後、常盤燿子はまず更衣室へ行き、有栖川涼のために清潔なパジャマを見つけて浴室の横のハンガーに置いてから、再び階下へ降りた。

彼女が角まで来たとき、立ち止まった。

有栖川涼はまだ彼女が上階に行く前と同じ場所に立っていた。遠くの置き時計を見つめる顔に大きな表情はなく、目は冷たくも熱くもなく、いつもの無関心な様子で、普段と変わらないように見えた。

しかし、常盤燿子は自分が敏感になりすぎているのかもしれないが、有栖川涼がどこか様子がおかしいように感じた。

彼女はしばらく躊躇してから、階下の有栖川涼に向かって静かに声をかけた。「お風呂の準備ができたわ。」