第401章 彼女の一目で、彼の一生を買い取った（1）

深愛なのよ、好きじゃなくて……

彼の声はとても小さく、ほとんど気づかれないほどだった。

有栖川涼の首元に顔を埋めていた常盤燿子は、一言も聞き逃さずにすべて耳に入れた。彼女は眉間にしわを寄せ、少し顔を上げて有栖川涼を見つめ、困惑した様子で尋ねた。「有栖川涼、今何て言ったの？」

有栖川涼はまだ意識があった。彼女の声を聞いて、乾いた青白い唇を何度も動かし、かすかな声が漏れ出た。

先ほどあの言葉を言った時、彼はすべての力を使い果たしたようだった。今、常盤燿子が彼の唇にどれほど近づいても、彼女が頭を彼の唇元まで寄せても、彼が何を言っているのか聞き取れなかった。ただ彼の呼吸がますます重く、苦しくなっていくのを感じるだけだった。

常盤燿子はようやく我に返り、ぱっと有栖川涼の体から飛び起き、すでに道路に上がって車で立ち去ろうとしていた警察官たちに向かって大声で叫んだ。