第419章 トラブルメーカーであり、和泉沙羅ではない(9)

彼の目の奥には感情があまり見られず、表情と同じように静かで穏やかだった。

和泉沙羅は自分が身代わりを探したせいなのか、有栖川涼の視線が何か深遠で測り知れないものに感じられ、まるでいつでも彼女の心を見透かされそうな気がした。

彼女は箸を握る手に、無意識のうちに力を入れ、有栖川涼の目を見返しながらも、視線がやや定まらなくなった。

高橋静香は彼女に、最近は有栖川涼とあまり接触しないように、隙を見せないようにと忠告していた...そう考えながら、和泉沙羅の視線は自分の前の茶碗に移った。茶碗にはほんの少しのご飯が残っているだけだった。彼女は落ち着いた様子を装い、箸を持ち上げて一品を取り、茶碗に入れながら、有栖川涼に向かって先ほどの説明を続けた。「途中で休憩の時間もあるから、その時に東京に戻ってくるわ」