有栖川涼はちょうど3階のオープンテラスにいた。彼は手すりに近づき、外を覗き込むと、やはりトラブルメーカーがいつも乗っている車が、ゆっくりと敷地内に入ってくるところだった。
彼女がついに帰ってきた……
一日中彼女を待っていたのに、一度も電話をかける勇気が出なかった有栖川涼は、家の玄関に近づいてくる車を見ながら、手すりに何気なく置いていた手に力を入れ、白い玉の手すりをきつく握りしめた。
彼は突然、非常に緊張し始めた。体の奥底から、恐れの感情が湧き上がってくるのを明確に感じ取った。
正確に言えば、この恐怖感は彼が怪我から目覚めて彼女の姿が見えなかった時から存在していたが、それほど強くはなかった。しかし今日の午後、更衣室のバッグが動かされているのを見たとき、彼は落ち着かなくなった。