この数年間、和泉沙羅は有栖川涼の冷淡さと無視を何度も目にしてきた。
しかし、今回の彼の無関心さは、彼女の心を極限まで不安にさせた。
長年にわたり、彼女はずっと彼の足跡を追い続けてきた。彼を捕まえることはできなかったが、彼を見失うこともなかった。
しかし今、彼の心に好きな人ができて、彼女はこのドアが閉まれば、彼と彼女は別世界の人間になってしまうと感じていた。
恐怖と動揺で、彼女は再び手を伸ばし、構わず有栖川涼の襟をつかんだ。「涼、信じて、私が身代わりを探したのは仕方なかったの。ただあなたのそばにいたかっただけ。涼、私はあの時病気で、やむを得ず...」
彼女がどうなろうと、彼には何の関係もなかった。
彼は聞きたくもなかったし、興味もなかった。
かつて「和泉沙羅」という名前をあれほど大切に、気にかけていたのは、トラブルメーカーが和泉沙羅だと思っていたからだ。