彼の車が門の入り口の曲がり角で消えた時、空にはまた一筋の眩しい稲妻が走り、すぐに頭上で地を裂くような雷鳴が轟き、驚いた執事は傘を持ったまま慌てて玄関に戻った。
傘を閉じると、執事は気づいた。ほんの少し外に立っただけなのに、パジャマは全身びしょ濡れになり、ズボンの裾からは水が滴り落ちていた。
雨は激しく、ほとんど視界を遮っていた。玄関のセンサーライトの明かりを頼りに、執事は庭の地面に白い霧が立ち込めているのを見た。
こんな大雨の中、深夜に外出するだけでも危険なのに、有栖川さんは熱を出して、まともに歩けないほどだった。それなのにあんなに速く車を走らせて、何か事故でも起こさないだろうか?
執事は考えれば考えるほど心配になり、濡れた服も着替えずに固定電話に駆け寄り、有栖川涼に電話をかけ始めた。