「そうよ、柊木誠一と港区で花火を見てるの」上杉琴乃が彼女の言葉に返事をしたばかりのとき、向こう側から花火が爆発する連続した音が聞こえてきた。一連の歓声が終わった後、上杉琴乃はようやく携帯に向かって、先ほどの騒音に隠れてしまった言葉を繰り返した。「燿子ちゃん、いつ東京に戻るの?」
「元宵節の後かな」
「そんなに遅いの?家には私一人だし、すごく退屈なの。早く帰ってきてよ…」上杉琴乃は甘えた声を出した。先ほどよりも彼女の方はずっと静かになっていた。おそらく花火を見終わって、車に戻ったのだろう。
「わかったわ、近いうちにチケットがあるか確認して、すぐに行くわ」少し間を置いて、常盤燿子はまた言った。「でも、少なくとも正月六日までは滞在しないと」
「オッケー、愛してるわ、チュッ」上杉琴乃はにこにこと返事した。