会議室にいた全員がこの言葉を聞くと、目に一斉に光が宿り、口では「有栖川社長、さようなら」「有栖川社長、おやすみなさい」と敬意を表しながらも、足早に散り散りになって一斉に出て行った。
生理中で体調が優れなかった常盤燿子は、会議が今まで続いたことで疲れ果てていた。「今日はここまで」という言葉を聞くとすぐにパソコンを閉じ、立ち上がる人々を見て自分も会議室のドアに向かって歩き出した。
彼女が眠そうにしているのを見て散会を告げたのだが、夜はまだ半ばだ。このまま別れてしまえば、彼女は彼が自分の部屋に戻ったと思うだろう。そうなれば、彼のこれまでの努力は無駄になってしまう。
有栖川涼はまぶたを少し動かし、考える間もなく声をかけた。ドアを出ようとしていた常盤燿子を呼び止めた。「常盤秘書」