ベッドの壁にだらりと寄りかかり、彼女が生姜紅糖茶を飲み終えるのを待っているように見えながらも、実際には前方の机の上で灯っている卓上ランプを見つめ、自分のことを考えていた有栖川涼は、彼女の声を聞くと、淡々とした表情で顔を向け、彼女を一瞥してから「ああ」と一言だけ返し、その場に立ったままだった。
常盤燿子は純粋に有栖川涼の休息を妨げたくなかっただけで、先ほどのような遠回しな帰ってほしいという言葉を言ったのだ。
今、彼が帰る気配がないのを見て、彼女も二度目を言い出しにくくなった。
室内は一気に静かになった。
彼女はベッドに座り、黙々と生姜紅糖茶を飲んでいた。
彼は傍らに立ち、無表情に卓上ランプを見つめていた。
しばらくすると、常盤燿子のカップの生姜紅糖茶が底を見せ、彼女がカップをベッドサイドテーブルに置こうとした時、まるで彫像のように立っていた有栖川涼が、姿勢を正して歩み寄ってきた。