彼女の心が震えた。彼女はようやく気づいた。彼が彼女を海から連れ出した後、彼女を部屋まで送り、薬を買ってきてくれたのに、自分の濡れた服をまだ着替えていなかったことに。
沖縄の気温は高く、風邪をひくことはないだろうが、それでも濡れた服を着ているのは不快なはずだ。
常盤燿子はソファに置いていた手をゆっくりと握りしめた。喉に何かが詰まったような感覚があり、感動と戸惑いが入り混じっていた。
「この薬は、朝と夜に一回ずつ塗るように」
常盤燿子は有栖川涼が何を言ったのかほとんど聞き取れず、ただぼんやりと「うん」と答えた。
「特にこれは必ず続けて塗ること。この薬なら傷跡が残らないから」
常盤燿子は今度は声も出さず、ただ無関心そうに頷いただけだった。
有栖川涼は常盤燿子の前にしゃがみ込み、しばらく考えた後、他に注意することはないと確認して、ゆっくりと立ち上がろうとした時、彼女の白く柔らかな脚に視線が引き寄せられた。