第15章 私の意思ではなかった

「……離して。」安藤若菜は低い声を出した。

藤堂辰也は唇を少し曲げたが、その目には少しの温もりもなかった。「どうした、協力したくなくなったのか?」

「離して……」安藤若菜の声は激しさを増した。彼女は力を込めて振り解こうとした、まるで暴れる子猫のように。

男は突然腕を緩め、安藤若菜は急いで数歩後ろに下がった。

長い髪が少し乱れていて、彼女は手で整えながら、目を伏せて静かに言った。「それ以外なら、他の条件を出してください。」

藤堂辰也は冷笑した。なんて頑固で死に物狂いの女だ!

「安藤若菜、チャンスは一度きりだ。」

「他の条件をお願いします。」彼女の口調は相変わらず穏やかで、変えられない決意が込められていた。

藤堂辰也は彼女を冷たく一瞥し、そのまま彼女の横を通り過ぎた。