夜、安藤若菜は寝る前に雲井陽介と少し電話で話していた。二人は実際、甘い言葉を交わすわけでもなく。
二人ともまだ恥ずかしがり屋で、ただ何気ない会話をして、お互いにおやすみを言って電話を切った。
若菜が携帯を置いて、ちょうど寝ようとしたとき、また電話が鳴った。
陽介からだと思い、すぐに電話を取ったが、表示された番号を見て、彼女の顔色がさっと変わった。
まったく、しつこい奴!
電話は藤堂辰也からで、若菜は出たくなかった。
彼女は直接電話を切り、電源を切った。うるさい声を聞きたくなかった。
電話から美しい女性の声が流れた:「申し訳ありません、お掛けになった電話の電源が切れています。」
辰也は電話をしまい、口元に冷たい笑みを浮かべた。
——
若菜が夜中に眠っていると、うとうとしながら、誰かに見つめられている気がした。