第117章 陽介から離れなさい

雲井陽介はほっと息をついた。彼は安藤若菜を引き寄せ、腕を彼女の肩にかけ、体重のほとんどを彼女に預けた。

安藤若菜は使用人と一緒に彼を支えながら外へ向かった。なぜか、彼女は藤堂辰也の鋭い視線が自分に向けられていることに気づいた。

出ていく時、彼女は無意識に振り返り、彼の目と合った。

彼の目には複雑な感情が宿っていた。少し深遠で、少し冷たく、そして全てを掌握している自信と、猫がネズミを手のひらで弄ぶような余裕があった。

安藤若菜はちらりと彼を見ただけで、すぐに視線を戻した。

彼が明言していなくても、彼の意図は分かっていた。彼の眼差しは彼女に告げていた。彼女は彼の手の平から逃れられないこと、彼は彼女を必ず手に入れるつもりだということを……

病院に着くと、雲井陽介は救急処置室に運ばれ、安藤若菜は外で彼が出てくるのを待った。