第172章 わざと彼女を困らせる

車が雲井雪の家に着くと、藤堂辰也はいつものように彼女の唇にキスをしてから、彼女が車から降りる準備をした。

ドアを開けようとしたとき、男が突然彼女に言った。「雪、結婚しよう」

雲井雪は驚いて振り返り、確信が持てずに尋ねた。「何て言ったの?」

藤堂辰也は口元を上げ、魅力的な笑みを浮かべた。「結婚しようって言ったんだ」

雲井雪はさらに喜びを感じたが、すぐに心配そうに尋ねた。「でも、あなたは私たちは結婚せずに、このままでいいって言ってたじゃない?」

「君が僕と結婚すると何か不幸が起きるんじゃないかと心配してたんだ。でも安藤若菜も何ともなかったし、もしかしたら君も大丈夫かもしれない。雪、早く君を妻にしたいんだ。嫌かい?」

彼の情熱的な言葉を聞いて、雲井雪の心臓は激しく鼓動した。

彼女がそれを嫌がるはずがない、むしろとても嬉しかった。

ただ、彼についての噂が本当に心配で……

藤堂辰也は彼女が黙っているのを見て、笑顔を消し、淡々と言った。「考える時間をあげるよ。三日後に返事をくれ」

「うん……」彼女はとりあえず頷くしかなかった。

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安藤若菜はネットで仕事を見つけ、あるレストランでウェイトレスとして働くことになった。

食事二食付きで、月給は二千元。

お金は少ないが、彼女にとっては何かすることがあり、少しでも給料がもらえるのはとても良いことだった。

今、手持ちのお金はどんどん減っていて、彼女は急いで働く必要があった。

レストランは新しくオープンしたばかりで人手が足りなかったため、安藤若菜は面接に行くとすぐに採用され、即日勤務を始めた。

このレストランはかなり大きく、マネージャーは軌道に乗ったら給料を上げると言っていたので、みんなやる気に満ちていた。

営業を始めて数日で、レストランの評判は広まり、ビジネスは非常に好調で、毎日多くの人が噂を聞きつけて食事に来ていた。

主にここのシェフが作る料理の味が良く、非常に独特だったため、多くの人を引き寄せていた。

「若菜さん、9号個室で追加の料理を注文したから、持っていってくれる?」料理を配り終えて戻ってきた彼女に、主任の玉木さんが指示した。

安藤若菜は笑顔で頷いた。仕事は大変だったが、彼女は少しも不満を言わなかった。