幸い彼には驚くべき自制心があり、頭の中にもまだ少しの理性が残っていた。
ここでそれをすれば、世界中から見られる野外セックスショーになることを知っていた。
安藤若菜を抱き上げ、彼は大股で車に向かって歩いた。シートを倒し、一方向からしか見えない窓を上げ、豪華な車は外界のすべてを遮断した。
安藤若菜は濡れそぼって椅子に横たわり、頬を赤らめ、目は霞んでいた。
強健な男性の体が覆いかぶさってくると、彼女の体は不思議と微かに震えた。
彼女は誓う、本当に酔っていたと。しかし同時に、藤堂辰也が何をしているのか、自分が何をしているのかも分かっていたと。
しかし彼女の理性はこれらすべてを止めることができず、おそらく彼女は魔法にかかったように、体の反応に従うしかなかった……
この夜、人気のない噴水池のそばは、安藤若菜の人生で忘れられない一夜となった。
忘れられないのは、ただ彼女が悲しいことに、自分の体が堕ちていくのを発見したからだった。
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目を開けると、安藤若菜は数秒間呆然としてから、自分が別荘に戻り、ベッドで寝ていることに気づいた。
昨夜どうやって帰ってきたのか、まったく記憶がなかった。
ベッドでしばらくぐずぐずした後、彼女はバスルームに行ってシャワーを浴び、服を着替えて階下に降りると、藤堂辰也がリビングで仕事をしているのが見えた。
彼は両足をコーヒーテーブルに乗せ、膝の上に小型のノートパソコンを置き、くつろいだ姿勢でいた。
安藤若菜が降りてくるのを見ると、彼は隣の席を叩いて、彼女に来るよう合図した。
安藤若菜は冷静に彼の隣に座ると、男は画面上の資産評価表を指さして彼女に言った。「これが安藤家の現在の総資産だ。金額はそれほど多くないが、立派な事業だ。昨日は君の誕生日だったから、これをプレゼントとして君にあげようか?」
これは安藤明彦の会社なのに、彼はそれを彼女にあげると言い、まるで安藤家が彼のものであるかのように、簡単に人にあげられるかのように。
安藤若菜は唇を引き締め、何も言わず、伏し目がちな目には何の感情も読み取れなかった。