女性のシャツは、胸元のボタンが簡単に弾け飛びやすいというのは、誰もが知っている事実だ。
安藤心が階下に降り、男の深遠な横顔を見つめると、彼女の心臓は思わず高鳴った。
当初、彼が妻運が悪いという噂を恐れなければ、彼と結婚していたのは彼女だったのに…。
安藤若菜が今まで何事もなかったということは、その噂が嘘だったということだろう。
彼女は男の前に歩み寄り、自ら進んで、小声で彼に言った。「辰也さま、若菜さんは今日、もう少しで交通事故に遭うところでした。足首を捻挫してしまいました。でも、すでに医者に診せてきました。医者は骨には異常がなく、数日休めば回復するでしょうと言っていました。」
藤堂辰也の視線がゆっくりとテレビから彼女の体へと移った。
彼の角度からは、女性の胸元の開いた部分がはっきりと見えた。
安藤心の豊かな胸は、シャツをぴったりと引き伸ばしていたため、ほとんど視覚的な障害物はなかった。彼女は自分の胸に自信があった。男性が見て感じるだけでなく、女性が見ても目を離せないほどだった。
彼の漆黒の眼差しの下で、安藤心は困惑し恥ずかしそうな表情を浮かべた。
「安藤さん」藤堂辰也の口角に妖艶な弧を描き、彼はゆっくりと口を開いた。「半分隠して半分見せるという誘惑の手口は、すでに多くの女性が私に試してきましたよ。」
安藤心の顔が一瞬で赤くなり、次に青ざめた。
彼女は彼の言葉の意味を理解していないふりをして、顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに言った。「あなた、何を言っているの?」
「直接服を脱いだ方が、私への誘惑はもう少し大きいかもしれませんね。」
安藤心は彼の視線の下で、「ようやく」胸元が露出していることに気づいた。彼女はすぐに手で覆い、彼を罵ろうとしたが、我慢して、結局は唇を噛みながら悔しそうに急いで立ち去った。
彼女が去ると、男は突然口角の笑みを消し、何事もなかったかのようにニュースを見続けた。
……………
夜、藤堂辰也がドアを開けて寝室に入ると、紅花油の香りがした。
安藤若菜はベッドに座り、薬で足首をマッサージしていた。
彼は彼女の隣に座り、彼女の手から薬の瓶を奪い、手のひらに少し紅花油を垂らし、淡々と彼女に言った。「その力加減では、二日で治る怪我も一週間経っても治らないぞ。」