もういいや、彼が出かけないなら、彼女が出かけよう。
安藤若菜は服を取り出して浴室で着替えた後、寝室のドアを開け、避妊薬を買いに出かける準備をした。
「どこへ行くんだ?」ずっと黙っていた男が突然低い声で尋ねた。
彼女は振り向きもせずに言った。「退屈だから、ちょっと外に出て体を動かしたいの」
「足の怪我はまだ治っていないのに、どこをうろつくつもりだ?」
「だからこそ運動して、早く治さなきゃ」
「待て、誰かに付き添わせる」
安藤若菜は振り返り、急いで断った。「必要ないわ、一人で大丈夫」
藤堂辰也は薄い唇を少し上げ、彼女を気遣うような表情を見せた。「そんなわけにはいかない。歩くのが不便なのに、一人で出かけるなんて心配だ」
安藤若菜は言葉を失った。本当に見せかけだけの優しさだ。彼がいつこんなに彼女を気にかけたことがあっただろうか。