彼の口元には残忍な笑みが浮かび、目の奥には血に飢えた暗い波が渦巻いていた。
「経緯を全て話せ、一言も漏らすな」
安藤若菜も彼に隠すつもりはなく、むしろ彼がその連中を捕まえて安藤心の仇を討ってくれることを期待していた。
彼女は事の顛末を話したが、安藤心が被害に遭った部分だけを省いた。
しかし彼女は嘘をつくのが得意ではなく、話の過程で矛盾が多々あった。
藤堂辰也の鋭い眼差しが彼女を見つめ、まるでX線のように彼女を見透かしていた。
「それだけよ……」安藤若菜は目を伏せ、少し後ろめたさを感じた。
男は手を伸ばして彼女の顔を包み、彼女に近づき、間近で見つめ合った。「安藤若菜、本当に嘘をついていないのか?」
「……ついてないわ」彼女は淡々と答え、目に宿る後ろめたさをうまく隠した。