彼の口元には残忍な笑みが浮かび、目の奥には血に飢えた暗い波が渦巻いていた。
「経緯を全て話せ、一言も漏らすな」
安藤若菜も彼に隠すつもりはなく、むしろ彼がその連中を捕まえて安藤心の仇を討ってくれることを期待していた。
彼女は事の顛末を話したが、安藤心が被害に遭った部分だけを省いた。
しかし彼女は嘘をつくのが得意ではなく、話の過程で矛盾が多々あった。
藤堂辰也の鋭い眼差しが彼女を見つめ、まるでX線のように彼女を見透かしていた。
「それだけよ……」安藤若菜は目を伏せ、少し後ろめたさを感じた。
男は手を伸ばして彼女の顔を包み、彼女に近づき、間近で見つめ合った。「安藤若菜、本当に嘘をついていないのか?」
「……ついてないわ」彼女は淡々と答え、目に宿る後ろめたさをうまく隠した。
「本当のことを言わないと、力になれないぞ。実は、安藤心は彼らに強姦されたんだろう?そうでなければ、なぜそこまで彼女の世話を焼くんだ?ねえ、君は嘘が下手だよ。君の目を見れば、心の中が全て分かる」
安藤若菜はまぶたが痙攣した。藤堂辰也は続けた。「彼女が本当に強姦されたかどうか確かめるには、今すぐ病院に連れて行って検査すればいい。本当のことを言わなくても構わない、事実に語らせよう」
言い終わると、彼は立ち上がって出て行こうとした。
「やめて!」彼女は慌てて彼を掴んだ。「安藤心はもう寝たわ、邪魔しないで!」
「なら本当のことを話せ」
「事情は今話した通りよ、嘘はついてない、どうして信じてくれないの?私が安藤心を心配するのは、彼女が危うく……とにかく、彼女が私を救ってくれたのよ」
藤堂辰也は再び座り、彼女の手を握り、突然優しく言った。「彼女が君を救ってくれたからこそ、彼女のためにあの連中を捕まえたいんだ。君が何もかも隠していては、どうやって犯人を突き止められる?」
「私が話した内容だけでも、犯人は突き止められるはずよ。バーには監視カメラがなくても、地下駐車場にはあるはず。それに私は彼らの顔を覚えているから、描くことができるわ。そう、描けるわ!」
彼女が立ち上がって紙とペンを探そうとすると、男は彼女を引き寄せて抱きしめた。彼女は彼の膝の上に座り込み、彼の腕が彼女の腰に回され、立ち上がれなくなった。