安藤心は藤堂辰也の向かいに座り、彼に視線を送った。その瞳に秘められた秘密は、彼女と彼だけが知るものだった。
「姉さん、今日は顔色があまり良くないみたいだけど、昨夜よく眠れなかったの?」安藤若菜が心配そうに尋ねた。
「うん」安藤心はベーコンパンを一切れ取り、口に入れながら、適当に返事をした。
彼女の視線は、まだ何気なく藤堂辰也に向けられていたが、彼はただ淡々と食事をし、真っ直ぐ前を見ていた。とても真面目そうに見えた。
なんて偽善者なんだ!
安藤心は心の中で恥ずかしそうに笑った。テーブルの下で、彼女は足を組み、スリッパを脱いだ。素足で藤堂辰也の足に触れ、こっそりと誘惑した。
安藤若菜が彼女に言ったことは、全く聞き取れておらず、ただ適当に返事をしていた。
今や彼女は手に入れたのだから、もう彼女の前で親友のふりをする必要はなかった。