安藤心の手術の時間がすぐに訪れた。
早朝、安藤若菜は誰にも行き先を告げず、こっそりと家を出て病院へ向かった。
バスを降りて、ちょうど安藤心に電話をかけようとしたとき、彼女の声が聞こえた。
「若菜、こっちよ」
見ると、安藤心はサングラスと帽子をかぶり、身なりをしっかり隠して木陰に立ち、彼女に手を振っていた。
彼女は近づいて、不思議そうに尋ねた。「姉さん、なんでそんな格好してるの?誰かに気づかれたくないの?」
安藤心は彼女の手を引き、遠くに停まっている介護タクシーの方へ歩き始めた。「黙って、ついてきて」
安藤若菜は不思議に思いながらも彼女についていき、車の前に着くと、安藤心は彼女に先に乗るよう促した。
彼女は不思議そうに尋ねた。「どこに行くの?」
「質問はやめて、とにかく乗って」安藤心の口調には焦りが混じっていた。安藤若菜は反射的にドアを開けると、中に二人の男がいるのを見て、顔色が変わり、呆然とした。