親切な人が二人に冷静になるよう、衝動的にならないよう諭した。
これは衝動ではなく、離婚は必須だった。彼女と彼の結婚は、名ばかりで実体のないものだった。今回こそ本当に終わりを迎えたのだ。
藤堂辰也は周囲の異様な視線に耐えられず、淡々と安藤若菜に言った。「家に帰って離婚協議書にサインして、この件は弁護士に任せた方がいいんじゃないか」
「だめ、今すぐあなたと離婚したいの」安藤若菜は譲る気なく言った。
男性の深い瞳が彼女を見つめ、彼女の目に冷たさを感じると、彼の心には不思議と怒りが湧き上がった。
「いいだろう、俺もお前とこれ以上一秒でも夫婦でいたくない!」
安藤若菜の心に痛みが走り、冷たく笑った。「お互い様ね」
藤堂辰也は怒りで彼女を見ることも、話すこともしたくなかった。