第436章 先にデザートを食べたい

島村おばさんはいつも六時半に起きるのに、藤堂辰也はなぜそんなに早く出かけたのだろう？

安藤若菜は彼が心配で、電話をかけた。しばらく呼び出し音が鳴った後、やっと電話に出た。

「ベイビー、どうしたの？」

彼女は彼に尋ねた。「今日のお昼、帰ってきて食事する？」

「わからないけど、できるだけ帰るようにするよ」

「藤堂辰也、仕事で何か問題が起きているの？」

「いや、ただ少し厄介な案件を処理しているだけだよ。心配しないで、僕を信じて、すべてうまく解決するから」

「うん、信じてるわ」安藤若菜は力強くうなずいた。

お昼になると、彼は確かに戻ってきて食事をしたが、食べ終わるとすぐに電話で呼び出されて出ていった。

彼がほとんど休まずに出かけるのを見て、安藤若菜は罪悪感を覚えた。彼がこんなに忙しいとわかっていたら、帰ってきて食事をするよう言うべきではなかった。

午後いっぱい、安藤若菜の気分は少し落ち込んでいた。

女性の直感は鋭い。彼が問題に直面していることはわかっていたが、彼女にできることは、彼の邪魔をせず、問題が早く解決するよう祈ることだけだった。

藤堂辰也が帰ってきたのは夜だった。安藤若菜が仕事の進み具合を尋ねると、彼は彼女を抱きしめて笑いながら言った。「ベイビー、家に帰ってきたんだから、仕事の話はやめようよ」

そうだね、彼は今家に帰ってきたのだから、仕事なんて何もかも消えてしまえばいい！

「わかったわ、話さないことにする。ご飯食べた？島村おばさんにお願いして、あなたの分を取っておいてもらったの」安藤若菜は彼の首に腕を回し、優しく尋ねた。

「まだ食べてないよ、少しお腹が空いてる」彼は彼女の額に自分の額をつけて、哀れっぽく言った。

「待っててね、温めてくるわ」彼女は彼の手を軽くたたいて、離れるよう合図したが、彼はさらに強く彼女を抱きしめ、意地悪そうに笑った。

「食事の前に、まずは軽く何か食べたいな」

そう言うと、彼は彼女の唇にキスをした。これが彼の言う軽食だった。

安藤若菜はお腹が大きいため、彼の胸に寄りかかることもできず、ただ頭を後ろに傾け、つま先立ちになって、彼のキスを受け止めるしかなかった。