第445章 失われた半分の魂

「わかりました。」彼女は淡く微笑んだが、その目には誰にも消せない悲しみが隠されていた。

朝食を済ませると、安藤若菜はいつものようにDVDを開けて音楽を聴き始めた。

彼女はソファにじっと丸くなり、頭の中は真っ白で、目は虚ろで、まるでこの世界に対するすべての興味を失ったかのようだった。

午後2時、雲井陽介は時間通りに帰ってきた。

彼がリビングに入ると、安藤若菜の無表情な様子を見て、彼の目に一瞬の暗さが過った。

顔に笑みを浮かべながら、彼は彼女の側に歩み寄り、身をかがめて彼女の肩を抱き、優しく呼びかけた。「若菜、若菜？」

二度呼ばれてようやく、安藤若菜は我に返った。

彼だと気づくと、すぐに微笑みを見せた。「陽介、帰ってきたのね。」

「うん、昼食は食べた？」彼は彼女の隣に座って尋ねた。

「お腹すいてないわ。」

彼は彼女が食べていないことを知っていた。

毎日彼女は音楽を聴きながらぼんやりとし、マギーがどれだけ呼びかけても反応しなかった。

彼が呼びかけたときだけ、彼女は我に返るのだった。

「行こう、何か食べて、それから医者に行こう。」雲井陽介は彼女の手を取り、優しく言った。

安藤若菜の瞳孔がわずかに縮んだ。彼女は医者に行きたくなかった。しかし、自分が病気であり、治療が必要だということを知っていた。

食事を済ませると、雲井陽介は車で彼女を心理医のところへ連れて行った。

快適で柔らかいソファに横たわると、中年の女医が笑顔で彼女に挨拶し、会話するような口調で尋ねた。「若菜さん、昨夜はよく眠れましたか？」

「はい。」

「夢は見ましたか？」

安藤若菜は答えなかった。医師はその話題を続けず、他のことを尋ねた。「先週は何をしていましたか？教えてくれませんか？シェアしてくれますか？」

……

雲井陽介は外の待合室に座り、1時間後、安藤若菜が中から出てきた。

彼と医師は目を合わせ、女医は肩をすくめた。進展がないという意味だった。

彼は安藤若菜の肩を抱き、微笑みかけた。「今日は時間があるから、午後は仕事に行かなくていいんだ。遊園地に行かない？」

風行はL国に子会社を設立し、最近は彼がここで仕事を処理していた。

安藤若菜は首を振った。「行きたくないわ。」

彼女は賑やかな場所が好きではなかった。人が多すぎると、彼女は途方に暮れてしまう。