第508章 全部私のせいだ

「若菜、あれは事故だったんだ。彼が喘息発作を起こすなんて知らなかった」

「そう、事故よ。あなたには何の関係もない！」安藤若菜は彼の手を振り払い、急いで服を取り出し、浴室で素早く着替えた。

藤堂辰也は彼女に説明しようと前に出たが、彼女は目を伏せ、冷たい目には彼の姿は映っていなかった。

「若菜……」男は手を伸ばして彼女を掴もうとしたが、彼女は嫌悪感を示して避けた。「触らないで」

彼女が蛇蠍のように彼を避けるのを見て、藤堂辰也の心は痛んだ。

安藤若菜はドアを開けて急いで階段を下り、男は彼女の後を追った。「病院に彼を見舞いに行くのか？」

「そうよ。もし私を止めようとしたら、死んでやるわ！」彼女は振り返って怒りの目で彼を睨みつけ、警告と決意に満ちた目をしていた。

藤堂辰也は目を伏せ、低い声で言った。「誤解だ。ただ送っていこうと思っただけだ」

「結構よ」

「行こう、私も病院で彼に会いたい」彼女の意思を無視して、彼は彼女の手を引いて外に出し、車に乗せた。

安藤若菜は抵抗しなかった。今の彼女にとって最も重要なのは、早く病院に行って雲井陽介の状態を知ることだった。

道中、彼女は彼と一言も話さず、表情は冷たかった。

彼女のこの態度は、彼が彼女を見つけた当初と同じで、同じように彼に対して憎しみと冷たさを抱いていた。

彼らがようやく和らいできた関係が、一瞬にして水の泡になってしまった。

藤堂辰也はハンドルをきつく握り、心は重かった。彼も理解していた。彼と安藤若菜の間の問題はますます深刻になっており、彼女が彼を受け入れる日が来るのかどうか疑問に思っていた。

車はすぐに病院に到着し、藤堂辰也は安藤若菜を雲井陽介の病室へと案内した。

病室に近づくにつれて、彼女はますます緊張した。

男はドアを開け、淡々と言った。「彼は中にいる。梁井おじさんに状況を聞いてくる」

そう言うと、彼は立ち去り、もはや彼女と雲井陽介が会うことを禁じることはなかった。

安藤若菜は部屋に入ると、最初に病床に横たわる男性を見た。

彼は酸素マスクをつけ、目を軽く閉じ、安らかに眠っているようだった。彼女は彼を起こさないように静かに彼のそばに歩み寄った。

しかし彼女は心の中で知っていた。彼女が彼の名前を呼んでも、彼が目を覚ますことはないだろうと。