第520章 私たちはもう5年近く知り合いだ

「協定は今日から有効だ。約束したことを忘れるな。私の好意を拒むことも、私の親密さを拒絶することもできない」

安藤若菜は一瞬戸惑い、すぐに彼の言う「親密さ」が最も親密な行為を意味することに気づいた。

正直なところ、今は彼とあまり親密になりたくなかった。しかし、彼女は既に彼に約束してしまった。もし約束を破れば、彼女が逃げ出す唯一のチャンスも失われてしまう。

男は魅力的に微笑んだ。「安心してくれ。君を怒らせるようなことはしない」

今の彼には、彼女を追い詰めすぎることはできなかった。一歩引いて徐々に近づき、彼の変化を理解させ、彼の良さを発見させるしかなかった。

安藤若菜は気にしなかった。彼が彼女を強制しないなんて、太陽が西から昇るようなものだろう。

寝室に戻ると、彼女はまず風呂に入り、その後藤堂辰也に入浴を促した。

ベッドに横たわりながら、彼女は彼と関係を持つ準備をした。彼とのセックスはすでに日常的なことになっており、嫌悪感も拒絶感もなかったが、心の中にはまだわだかまりがあり、完全に喜んでいるわけではなかった。

雲井陽介が病院で昏睡状態にあることを考えると、彼女は何もできず、それでも藤堂辰也と一緒にいることに、さらに罪悪感を感じた。

実際、それが全て藤堂辰也の責任ではなく、彼女にも責任があることは分かっていた。

しかし、なぜか彼女はすべてを彼のせいにしたかった。

もしかして、彼から離れる言い訳を探しているのだろうか?

安藤若菜が考え込んでいると、突然背中に温かい胸が押し当てられるのを感じた。

彼女の体は少し硬くなった。藤堂辰也の裸の胸が彼女の背中に触れ、彼の手が彼女の腰に触れ、軽く撫でていた。

彼女は振り向いて彼を押しのけたかったが、必死に我慢した。

これはいずれ起こることだから、早く慣れた方がいい。それに彼に機会を与えなければ、彼はそれを口実に彼女が去る機会を与えないかもしれない。

男は彼女の体を向かせ、二人の目が合い、お互いを静かに見つめ合った。

藤堂辰也は手を伸ばして彼女の顔に触れ、低い声で言った。「知ってるか?君が僕から逃げた時、僕は夜一人で眠れなかった」

「……」