これは児童福祉施設で、中の建物は古びており、長い年月が経っていることが一目でわかる。
門を守る老人は警備室で眠っており、その横には小さな扉が開いていて、誰かが忍び込んでも気づかれないだろう。
安藤若菜は老人を起こしに行き、状況を簡単に説明して、女性が中に入ったかどうか尋ねた。
老人は首を振って、いないと言った。彼は一日中ここで見張っているので、誰かが入れば知っているはずだと言う。
安藤若菜は何も聞き出せず、長谷川おばさんと一緒に立ち去り、あてもなく道を歩いた。
このように安藤心を探すのは、まさに大海の中から針を探すようなものだ。
彼女は藤堂辰也に助けを求めることも考えたが、それはただの考えに過ぎず、まだ彼に助けを求めるところまでは至っていなかった。
「本当に厄介だわ、あの女はあまりにも横柄で、物を取って金を払わず、私に向かって怒るなんて。子供を連れていなかったら、絶対に平手打ちしてやったのに」
小さな店の前を通りかかると、安藤若菜は店主が隣人に不満を漏らしているのを耳にした。
隣人は言った。「彼女の服装は変だったわ。物を掴んでは食べて、飢えた様子だった。精神病院から逃げ出してきたんじゃないかしら?」
「きっと精神病ね。見た目は悪くないのに、残念ながら狂人だなんて、本当にもったいない」
長谷川おばさんは急いで安藤若菜の袖を引っ張った。「安藤さん、もしかしたら安藤心さんじゃないでしょうか?」
「たぶんそうだと思います」
そこで二人は前に出て状況を聞き、彼女がその方向に走って行ったこと、そして出発してからまだ30分も経っていないことを知った。二人は心が躍り、急いで探しに走った。
もし本当に安藤心なら、彼女の錯乱した様子からして、あまり遠くには行かないだろう。彼女たちが急げば、追いつけるはずだ。
道中、二人は注意深く探し、多くの人に尋ねた。皆、錯乱した女性が子供を抱えて通り過ぎるのを見たと言った。
約10分ほど探した後、ついに前方に女性の姿を見つけた。
彼女はしゃがみ込み、片手で子供を引っ張り、もう片方の手で子供の口に無理やり何かを押し込もうとしていた。
安藤若菜は数歩前に進み、横顔だけで彼女が安藤心だと認識した。