後になって考えると違うと思い、もう一度西洋レストラン全体を探し回ることにした。
しかし、すべての個室を探し回り、すべての個室の客を怒らせた30分後、彼は2階の階段の入り口に立ち、涙が出そうになった。彼は再び、目の前でその小柄な女性が逃げていくのを見るだけで、彼女に説明する機会さえなかった。彼女が再び音もなく消え去り、二度と現れなくなることを彼はとても恐れていた。
雲井絢音はずっと彼の後ろについて、彼を慰めた。「きっと見つかるわ。彼女がここに現れたということは、彼女が神戸市に戻ってきたということよ。頑張って探せば、きっとまた見つかるわ。ただ、彼女はあなたに会いたくないようね。」
「わかっている」冷泉辰彦の表情はさらに暗くなり、立体的な顔立ちに深い痛みの色が浮かんだ。彼は一歩一歩階段を降り、寂しげな背中を見せながら自分の車へと向かった。
最後に、彼は振り返り、後ろにいる雲井絢音に言った。「先に帰っていいよ、今ちょっと用事があるから。」
雲井絢音は彼を見つめ、軽くうなずいた。
「じゃあ、そういうことで」冷泉辰彦は彼女を見ることなく、車のドアを開け、走り去った。
彼が向かった先は会社ではなく、藤原則安の家だった。これは彼が藤原則安の家を訪れるのは2回目で、1回目は4年前だった。千雪が失踪したあの日々、彼はフォックスから何も得られなかった後、初めて藤原家を訪れ、藤原則安を探した。
なぜなら、彼は藤原則安が唯一のライバルだと知っていたからだ。そしてその期間、藤原則安も姿を消していた。しかし、誰も彼に藤原則安がどこに行ったのかを教えてくれなかった。
一ヶ月後、藤原則安は突然戻ってきたが、それ以来外出することはなく、規則正しく仕事と付き合いをこなし、何事もなかったかのように自分の生活を送っていた。
彼は一度藤原則安に会い、千雪の行方について尋ねたが、藤原則安は冷たい表情で一言も言わず、拳を握りしめて彼に殴りかかるのを我慢していた。その瞬間、彼はこのライバルの口から千雪の行方を探ることは不可能だと悟った。
その後、辰浩の事件が起きた。