あの一件以来、二人は友達になり、何でも話せるようになった。
彼は彼女を信頼し、他の女の子からの接近には応じなかったが、彼女だけは校舎の屋上に誘って心を打ち明けた。彼の言葉は少なく、いつも数言だけだったが、彼女は彼が心の内を話していることを知っていた。彼が心を開くことは、彼が彼女を信頼している証だった。
そして彼女は、彼を自分の支えにしていた。
辰彦が彼女の前で泣いたことが一度だけあった。それは彼の母親が転落し、父親が行方不明になった時だった。彼は一瞬絶望し、彼女の肩に顔を埋めて強く抱きしめた。
彼女は心を痛めた。結局、彼はまだ14歳の少年に過ぎなかったから。
そして彼女は、彼が父親を憎んでいることを何となく知っていた。それは彼の父親が結婚に誠実でなかったからだ。それは養父からの嫌がらせを受けた彼女自身の心の傷と同じように深いものだった。