第201章

「則安！」ずっと黙っていた千雪が突然声を上げた。彼女は則安の服の裾を引っ張り、唇を噛んで言った。「則安、婚約の日をもう少し延ばせないかしら？一週間は早すぎるわ……」

「千雪、どうしたの？なぜ延期したいの？早く結婚したいと言っていたじゃないか？」則安は眉をひそめ、彼女の肩をしっかりと掴んだ。

「私は……」千雪は頭を下げ、バッグの持ち手をほとんど握りつぶしそうになっていた。「わからないの、ただとても怖くて……」

「何が怖いんだ？」則安は追及した。

傍らの三人の年配者も彼女を見つめ、それぞれの感情を目に宿していた。フォックスは目を光らせ、軽くため息をついた。

しかし則安が答えを聞き出す前に、入り口からまた一団の人々がこちらに向かってきた。

それは黒いイブニングドレスに着替えた高田小雪と化粧を直した麗由、そして横を歩く冷泉辰彦で、彼の端正な顔は青ざめていた。