それは数日前、温井雅子を救うために質屋に入れたダイヤの指輪だった。
私にとって!
もはやそれには何の意味もなかった。
どうせ田中遠三はすでに私を裏切り、自分の約束も破ったのだ。
こんなものに未練はまったくない。
「そう、これは私が質に入れたものよ!お金に換えて、鈴木誠一に渡して温井雅子を救い出したの!」
「つまり、あなたは松岡雲のものを盗んだということ?」
「そんな言い方しないでよ。盗むって何よ、私が松岡雲本人なんだから!」
実際、最初に転生の話をした時、伊藤諾はそばにいたから、彼に隠す必要はなかった。
しかし、伊藤諾は信じなかった。
彼はこの指輪を請け出した。
「田中遠三に見つかったら、どうなると思う?」
私は伊藤諾を白い目で見た。
「私が松岡雲本人だと思う?」
「お前はお前だ。お前が彼女であるはずがない」