第15章 彼は実は情に厚い人だった

この時、酒席はすでに空になっていた。

個室には田中遠三一人だけが残っていた。

しかし彼はまだ酒の興が尽きていないようで、グラスを手に取り、一杯また一杯と飲み続けていた。

「田中社長、私の友人なんですが、彼女は今年のTIFファッションデザインコンテストで最優秀賞を受賞した人なんです。彼女を当社でインターンとして推薦したいのですが、いかがでしょうか?」

田中遠三の秘書として、一人か二人のインターンを紹介することは、ごく普通のことだった。

田中遠三は声を聞くとグラスを置き、ゆっくりと葉山夢愛の方を見た。

私は前回、葉山夢愛が会社に来ていたのを覚えている。

あの時、田中遠三は深川舟一を叱りつけ、葉山夢愛をもう来させるなと言っていた。

今回二人が向かい合って過ごすなら、彼らがどのように自分の感情を隠すのか見てみたいものだ。