第52章 少しの過去

伊藤諾の言葉は私の注意を引くことに成功し、私は静かに座るしかなかった。

実際、今の私の慌てぶりは、何の役にも立たない。

まず自分が取り乱してはいけない。

伊藤諾はお茶を入れ、私に手渡した。

私は一口飲んで彼を見た。

「碧螺春?」

伊藤諾は肩をすくめた。

「どうして私がこのお茶が好きだと知ってるの?」

伊藤諾はライターを手に取り、私をちらりと見て、

「あなたが好きかどうかは知らないよ!ただ私が好きなだけだ。」

「そう...それは偶然ね!私たちには共通の趣味があるなんて。」

伊藤諾は軽く笑って、

「因縁かもしれないね!!」

お茶を一杯飲んだ後、私もだいぶ落ち着いた。

「話してよ、鈴木誠一は何を言ったの?」

「彼が言うには、竹田佳子が拘留された後、田中遠三がすぐに面会に行ったらしい。そして、竹田佳子の保釈を試みたようだが、成功しなかったとのことだ。」