私はようやく慌てずに契約書を準備し、先ほど染谷葉瑠が送ってきた画像を印刷して、書類入れを持って出発した。
天藤会社は私たちから遠くなく、一つの通りを隔てただけだった。
同じくアパレル会社だが、天藤会社は私たちよりもはるかに実力が豊かだった。
この衣料会社の由来は恐らく民國時代にまで遡るだろう。伊藤家の曾祖父は旧東京でチャイナドレスの仕立て屋をしており、代々衣料工場が受け継がれてきたのだ。
正門には、今でも古風な衣料店の看板が掛けられていた。
入るなり、伊藤諾とぶつかった。
彼は青いスーツに白いシャツを合わせ、禁欲的な雰囲気で、冷たくも高慢だった。
おそらく誰かが情報を漏らしたのだろう、伊藤諾は私の来意をすでに知っているようだった。
「君は本当に大胆だな、我が社に来て人を引き抜こうとするとは?」