この場所は以前、昼間に来た時はそれほど何とも思わなかった。
しかし夜に来てみると、ここは不気味で怖いと感じた。
周囲は静寂に包まれていた。
その赤い微かな蝋燭の光は、鬼火のようで、私がまだ近づく前に、道士が幡を持って魂を呼び戻す声が聞こえた。
「魂よ、戻れ、松岡雲、戻ってきなさい!」
それを聞いて、全身が鳥肌だらけになった。
蝋燭台の前で、スーツ姿の田中遠三が真剣な表情で線香をあげていた。
彼のこの姿に少し驚いた。
私の中では、田中遠三は決して霊や神を信じない人だった。
以前、友人から新年に初詣に行くと会社の財運が良くなると聞いた。
何度か彼を誘って一緒に参拝に行こうとしたが、何度も冷たく断られ、さらに彼に笑われた。
彼は何度も私に、強者は霊や神を信じないと言っていた。