心が一瞬慌てたが、すぐに冷静さを取り戻した。
「首が少し不快で、薬をもらいに病院に来たんです……」
この言い訳は理にかなっていた。
彼もただ何気なく聞いただけのようで、それ以上追及せず、続けて言った。
「重症室のこちらにいるから、ちょっと来てくれ!」
「ああ、わかりました!」
電話を切って伊藤諾を見た。
伊藤諾はすぐに制止した。
「彼が何のために来いと言ったの?行かないで!」
私は伊藤諾を見て、突然笑った。
「何を笑っているの?」
「あなたを笑ってるの!」
「行かないでって言ったことに何か問題があるの?」
「気づいてないの?田中遠三は私の上司なのに、あなたは私に彼に会いに行くなって……」
「彼がどんな上司?クズ男でしかないじゃない。あなたが彼に近づきすぎると、早晩何か起こるわよ!」