葉山夢愛に何があったのか分からなかったが、田中遠三が彼女のことをずっと心配していたのは明らかだった。
そのせいで、この一局で彼は負けてしまった。
彼は気が散っていたことを言い訳にせず、潔く負けを認めた。
「よし、君の勝ちだ!」
田中遠三は立ち上がり、タバコを取り出してライターで火をつけた。
そして窓の前に歩み寄り、タバコを吸い始めた。
「さあ、何か要求はあるか?」
彼は深い眼差しで私を見つめた。
私が臻一株式会社に残ることを選んだのは、今自分の目標があるからだ。
たとえ彼がゴールデン入り江の放火事件に関わっていなかったとしても、彼が私を裏切ったという事実は確かなものだった。
それだけでも、私は彼を許すつもりはない。
だから、今から私は自分の手で作り上げた臻一株式会社を解体していくつもりだ。