第111章 彼を手玉に取る

確かに、私が先ほど田中遠三の手に渡したあの書類は、辞表でした。

彼の驚きに対して、私は素直に応じました。

「これは前から決まっていたことではないですか？田中社長はなぜそんなに驚かれるのですか？」

田中遠三は立ち上がり、

「私たちの間で話したのは、表面上会社との関係を切るということであって、本当に辞めるということではなかったはずだ。」

私は淡々と微笑みました。

実は今となっては、彼は問題がどこにあるのか気づいていないのです。

この一連の出来事は、すべて葉山夢愛に陥れられたものでした。

今は幸運にも一矢報いることができましたが、事実の本質は変わっていません。それは葉山夢愛が私を陥れようとしていることです。

彼だって馬鹿ではありません、それくらい見抜けるはずです。

ただ、彼は葉山夢愛の問題を追及したくないだけなのです。