「はい!」
「はい?何がはいなの?それとも...あの出会いはあなたが仕組んだの?」
「全部そうだよ!」
「つまり、あなたは一度も祐仁を愛したことがなくて、ずっと彼女を利用していただけなのね?」
「そうだ、全部そうだ、これで満足か?」
田中遠三の告白を直接聞いて、私は涙が止まらなくなった。
なんてこと、私は田中遠三と10年間愛し合っていたと思っていたのに、全て私の思い込みだったなんて。
結局、私たちの間に愛情なんて存在しなかったのだ。
最初から最後まで、ただの騙し合いだった。
彼は一度も私を愛していなかった。
ふふ......
田中遠三の姿が徐々に遠ざかっていく。
温井雅子はようやく階上に戻ってきた。
彼女は私を慰めながら言った。
「祐仁、あまり悲しまないで。クズ男はクズ男よ、彼のために悲しむなんて価値がないわ」
悲しくないなんて嘘だ。
結局、十数年の感情が全て間違った相手に注がれていたのだから。
愛したからこそ、傷ついたからこそ、辛いのだ。
「雅子、私ってバカだと思う?」
「もちろんそんなことないわ。人生は長いもの、誰だってクズ男に出会うことはあるわよね?」
「うん!」
温井雅子は話題を変えて言った。
「あなたのおばさんに薬を盛った人は特定できたの?」
「まだ誰かはわからないけど、この薬を伊藤諾に渡して、分析してもらってくれない?」
「あなた自身で渡さないの?」
「これから会社に戻らなきゃいけないから、長く時間を取れないの」
「わかったわ!」
私は先ほど集めた薬のサンプルを温井雅子に渡した。
そして花岡おばさんとこの半年間にこの家に出入りした人について話し合った。
花岡おばさんは五十嵐麗子に長年仕えてきて、忠実で仕事が早いだけでなく、細心の注意を払う人だった。
彼女は訪問記録帳を持っていて、この半年間に松岡邸を訪れた客を全て記録していた。それを今、私に手渡してくれた。
「花岡おばさん、信頼してくれてありがとう」
花岡おばさんはため息をついた。「はぁ、私はいつも私たちのお嬢様がまだ生きているような気がするのです。お嬢さん、どうか奥様を害している人が誰なのか突き止めてください」
「必ずやります!」
花岡おばさんにハグをして、長年おばさんの世話をしてくれたことに感謝し、そして立ち去った。
30分後。