「まあ、好きに言えばいいわ!どうせ来週の金曜日の記者会見で、あなたも分かるわよ」
エレベーターのドアが開き、葉山夢愛はエレベーターから出て行った。
私はしばらく頭が回らず、エレベーターのドアが閉まり、再びゆっくりと上昇していくのを見ていた。
どれくらい時間が経ったか分からないが、ようやく我に返った。
「松岡さん、あなたここで三回も上下してるけど、どうしたの?」
久保雲子が私の様子がおかしいことに気づき、声をかけてきた。
「ああ、ちょっと考え事をしていたの!」
「松岡さん、最近仕事で疲れすぎじゃないですか?ちゃんと休めてないみたいですね。会社の業績も明らかに良くなってきてるんだから、体調にも気をつけないと」
「大丈夫よ、心配してくれてありがとう!」
エレベーターを出ると、外はもう暗くなっていることに気がついた。
腕時計を見ると、もうすぐ6時だった。
そこで思い出した、温井雅子と夕食の約束をしていたんだった。
実は今夜は集まる気分ではなかった。
彼女にメッセージを送った。
「今夜はやめておこうかな」
「伊藤諾がここにいるわ、前回あなたが持ってきた薬の検査結果が出たって」
「わかった、すぐ行くわ」
「水色レストラン、9号個室よ、待ってるね!」
その薬は前回、叔母の五十嵐麗子の家で見つけたもので、伊藤諾に頼んで調べてもらっていた。
今、結果が出たようだ。
私はためらわず、すぐに車でレストランへ向かった。
30分後、温井雅子が予約した水色レストランに到着した。
このレストランは初めて来たが、特徴的なのは水上レストランだということだ。
川沿いに大きな船が停泊しており、船上は明るく照らされていて、とても新鮮だった。船に乗り、9号個室のドアの前に来た。
この個室のドアもとても面白く、木彫りの大きな鯉が彫られていた。
ノックしても誰も応答がなかったので、そのままドアを押して中に入った。
驚いたことに、個室の中は真っ暗で、誰もいなかった。
私が戸惑っていると、突然灯りがついた。
それはキャンドルの灯りだった。
ケーキの上のろうそくが、ゆっくりと私の前に運ばれてきた。
ケーキを持っていたのは温井雅子だった。
「願い事をどうぞ!」
「えっと...私の誕生日は昨日よ!」